両眼視とは
両眼視とは右眼と左眼で同時に物を見ることですと言うと、なんだそんなことかと思われるかもしれません。しかしこの普段何気なく行なっている両眼で見るという作業は、実は気が遠くなるぐらい奥が深いメカニズムで成り立っています。このメカニズムの一部に何らかの問題があるといろいろな症状をひきおこします。
お知らせ
これらの症状は目以外の原因で起こることもありますが両眼視のメカニズムのどこかに問題があって起こっている可能性が非常に高いです。この両眼で物を見るという単純な作業が適切に行なわれているかいないかは、仕事や勉強、スポーツの能力などに大きく影響します。
*読書中同じ行を読んでしまったり、行を飛ばしたりする。
*読み書きに時間がかかる・集中力が持続できない。
*パソコン使用時、画面と書類の視線のやり取りが辛い。
*近視のメガネを掛けると黒板はよく見えるけど、手元の教科書が見づらい。はずせばよく見える。
*野球などの球技がいまいち苦手。
*車の車庫入れ時、後ろの距離感がつかみにくい。 。
*左右の視線がずれて、物が2つに見える。(ダブって見えるのではなく同じ景色が2つ見える)
*運転中疲れてくると道路が2本に見え、片目をつぶると直る。脳のMRI検査までしたのに、原因がわからない。
*3Dテレビ観賞時、奥行き感や立体感が他の人より弱い気がする。
*長年に渡り、眼精疲労、肩こり、頭痛に悩ませられている。
両眼視という感覚を実感してみる
両眼視という機能をご理解いただくために、ボールペンを一本ご用意ください。ボールペンを目から40cmのところで持ち、右目と左目それぞれ片目で見てください。右目で見るとボールペンの右側面が、左目では左側面が見えると思います。ところがそれを両目で見ると、きれいにひとつにまとまります。右目で見ていた部分も左目で見ていた部分も同時に見ることができます。もちろん周りの景色も片眼で見る時よりだんぜん広くなります。両眼同時に見ることは、とっても便利な機能であることがお解かりいただけると思います。
また両眼視は私たちに立体感や距離感という人生にはなくてはならない大切な感覚を与えてくれます。ボールペンを目から30cm、20cmと近づけてみてください。40cmで見る場合より左右の見え方の差が大きくなります。次に目から50cm、60cmと離して見てください。左右の差が少なくなると思います。この右目と左目で見る画像の差を両眼視差と言います。右目と左目の間に6cmほどの距離があるために差が生じるわけですが、私たちは両眼視差の量の違いから立体感と距離感を感じ取ることができるのです。大型運転免許の深視力検査、野球で飛んでくるボールをつかむタイミング、3Dテレビを見た時の立体感、すべてに両眼視と両眼視差が関わってきます。不幸にも人生の途中で病気やけがで片眼の視力を失った方は、目の前にある湯のみにお茶を注ぐのにも苦労します。両眼視差を感じることができないため湯飲みの前後の位置がうまく認識できないからです。片眼の視力を失うという事は、片方の視野が無くなると同時に、両眼視や立体視も無くしてしまうと言う事です。
両眼視には個人差があります
この大切な両眼視。両眼が健康なら必ずうまく働くかといったら、残念ながらそうとはいきません。視力も良く、目に関わる病気も一切したことがない方でも、両眼視がうまく機能していない場合や、反対に近視や乱視があって視力は悪いのだけれども両眼視はいたって良好な場合もあります。またその精度にもとても大きな個人差があります。精巧な両眼視を持っている人や両眼視がやや弱い人、深刻な問題がある人、また両目を開いていても片方の目だけしか使っていない人もいます。指の指紋が一人一人違うように、両眼視もその人その人によって千差万別なのです。また遠くを見ている時と、近くを見ている時ではそれぞれ違ったメカニズムを持っているため、 遠くを見ている時は全く健全な両眼視をしているのに近くを見る時に問題がある場合、近方は良好なのに遠くを見ている時だけに問題がある場合。またその両方という場合もあります。